最近読んだ小説5冊の感想
1. 早坂吝『誰も僕を裁けない』
『◯◯◯◯◯◯◯◯殺人事件』での空前絶後のバカトリックがミステリ界に衝撃を与えた早坂吝さんの傑作と言われるのが『誰も僕を裁けない』です。
この物語、序盤の展開からして好き嫌いがわかれるでしょう。だけどキワモノとして片付けてしまうのはもったいない。キワモノでありながら本格ミステリとして成立している奇跡。その上、本格ミステリに対するパンクスピリッツさえ感じます。
種明かしの段で私は「どんだけ伏線張るんだよ」と本に向かって叫びました。
2. 絲山秋子『薄情』
絲山秋子さんは私がとても好きな作家です。『薄情』は群馬県高崎市という都会でもなくド田舎でもない地方都市を舞台に、ゆるい人間関係を描いた小説です。高崎には縁があるので、時々出てくる詳細な描写に「あーね」と思いながら読みました。
人と人との微妙な距離感を書かせたらこの人の右に出る者はいないと思っています。平易に紡がれながらも核心を敢えて避けてゆるりと書かれる文章はまさに純文学といった感じ。希望の物語です。
3. マーク・ハッドン『夜中に犬に起こった奇妙な事件』
文体から、この物語の主人公は何らかの障害を抱えていることがわかります。犬に起こった事件を解決する探偵として、知らない世界へ旅立つ冒険者として、一人の少年が得たものとは。読後感が最高に良いです。
画や写真、グラフィックが差し挟まれるのも特徴で、読みやすい実験文学として解釈することも可能です。
4. 朝井リョウ『何者』
これを読んで、朝井リョウさんは小説家になるために生まれてきたんじゃないかと思いました。才能がすごい。一般には、若い書き手が就活に切り込んだ直木賞受賞作とみなされていると思いますが、本書の本分はそれ以上のものです。
まず、最初の10ページからしておもしろい。劇的なことが起こるわけではないのだけれど、これから展開されるであろう伏線みたいなものが無駄なく散りばめられていて、一気に引き込まれる。とにかく一冊を通じて無駄がないのがすごい。
就活を全く真面目にやらなかった私でも最後までおもしろく読めました。
5. 長沢樹『消失グラデーション』
ある書評ブログに「バカミス」として紹介されていたので読みました。一時期話題になって本屋で推されていたのを覚えています。
本書最大のトリックについて、私は序盤で「もしや、いやまさか」と少し想像していたのですが、いざそれが解き明かされる段になると、私は本に向かって「おいおいおいおいおいおい」と叫びました。そのまさかでした。爆笑。
とは言え、この複雑なプロットを良く一冊にまとめたなと感心しました。文も読みやすく、トリックを抜きにしても青春ミステリとしておもしろかったです。
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