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仮想通貨SF短編小説『Fコイン』

koichimiwa

Published: 04 Jun 2018 › Updated: 04 Jun 2018仮想通貨SF短編小説『Fコイン』

仮想通貨SF短編小説『Fコイン』

【まえがき】

同じものALISにも投稿しました。
せっかくだからこっちにも投稿しないと損だぜ〜
という乞食根性丸出しです^^

小説なんて初めて書きました。
小説家さんには一定のリスペクトがあるし恐れ多くて挑戦もしませんでしたが、ちょっと映像でやりにくい内容だったので初挑戦です!
なお、ボクは小説なんてほとんど読みませんので、お作法は知りませんw

素人の小説をゆる〜くお楽しみください。
( っ・ω・)っドゾォ

【本編】

Fコイン

✳︎   ✳︎   ✳︎

ドギマギして思わず俯いていた。スマートグラスの中の画面が目に入る。
このメガネ状のデバイスは下を向くとアプリが見られる設定だ。
アプリの中の少女は屈託のない笑顔で僕を見つめ返してくれている。
「アプリ見てるの?」
その声に思わず顔を上げると、そこには画面と同じ少女が“実際にいて”息を飲んだ。
「あ、いえ! はい!」
言い訳めいた気持ちと正直にあるべきという妙な男らしさアピールで、僕は素っ頓狂な返事をしていた。
「どっちよ」
そう言って吹き出した顔が、なおさら画面の中の笑顔と一致した。
当たり前か。本人なんだから。むしろ、画面のそれより数倍可愛いじゃないか。
本当にこの子に、『アリス』に会えるなんて、夢のようだ。
アリス…そうか、これは夢なのか。
「夢じゃないよ」
アリスの言葉に、尻が2cmほど浮き上がった。
「アリスっていうユーザーネーム、本名だから。何人も同じこと聞かれてちょっとうんざりかな」
「ぼ、僕は疑ってなんてないよ!」
「ほんと〜?」
「ホント! ホントに!」
「なんか嬉しい」
グラスの水につけた小さな唇がツヤツヤと僕を挑発する。「何人もの男と言葉を交わした唇よ」と。
これだけの美人なのだ、男どもが放っておくはずがない。僕もその一人だ。
出会い系アプリ『Fコイン』。
2019年に流行った『Datecoin』の後継プロジェクトで『Fatecoin』が正式な名称だ。その名の通り、運命の相手を探し出すという触れ込みで始まった“Datecoinの上位版”だったが、実際にはヤリモクたちに荒らされてしまい、「Fxxkoin」「Fワードコイン」などと揶揄されている。「Fコイン」と呼ぶのは真面目な出会いを求めているごく一部の人間だけだ。それでもどういうわけか、出会い系アプリ市場はFコインの独壇場だし、無意識に僕も登録を済ませていた。
アリスは僕が一目惚れして、初めて会う女の子だ。
今どき、みんなが普通に着用しているスマートグラスも、彼女の手にかかれば知的な大人の女性を演出する引き立て役だ。
それでいて幼さを残すクリクリとしたつぶらな瞳が僕の次の言葉を待っている。
「こんな普通のファミレスなんかでよかった?」
とっさに不安を口にしてしまった。
また見透かしたようにアリスが答える。
「堅苦しくなくて、むしろ好き」
アリスの口から「好き」という言葉が聞けただけでお腹がいっぱいだ。
そういえば僕は何を頼んだんだっけ?
その答えをウェイトレスが突き出してきた。
「お待たせいたしました。ハンバーグセットでございます」
あぁ、そうだ。一番無難なのを選んだんだった。
鉄板には平凡なソースがかかったハンバーグと定番のニンジンにインゲン、ソーセージが二本乗っている。
アリスが自分の醤油ラーメンと見比べて言う。
「わぁ〜美味しそう!そっちの方が良かったかな」
「え、それじゃ、取っ替えようか?」
「サトシくんは優しいね。いいの。私、お肉食べてる男の子好きだから」
「そうなんだ? 良かった。昔から好きなんだよね、ハンバーグ」
調子に乗った。心にもない。言い直せ「無難だから」って。
「ふふ、もしかして『じゃぁ今度作ってあげる』とか言わせたいの?」
「別にそういうつもりじゃないよ」
無難が裏目に出た。あざといと思われただろうか?
いたずらに笑うアリスが、自分の中の小悪魔を知ってか知らずか、続けて言う。
「ふ〜ん。残念。チャンス逃しちゃったね。」
「チャンス?」
「私を部屋に誘うチャンス」
「え?」
「じゃなくて、私が料理の腕を披露するチャンス!」
「は、はは、そうだね、残念」
わかっている。彼女は僕を弄んでいるんだ。
ヨダレ垂らした駄犬の首輪のリードをブンブン振り回す遊びだ。悔しいけど、そのリードがゴムでできているせいで、強く振り回されるほど、駄犬は君に引き寄せられる。
「食べよ! いただきま〜す!」
無邪気に言うとアリスはラーメンをすすり始めた。そんな姿まで絵になる。
僕は見惚れてナイフの使い方を忘れてしまう不安から、ソーセージをフォークで丁寧に刺し、口に運んだ。カリッと音を立てマグマが口に流れ込む。
「熱っ! あっつ!!」
存外デカかった僕の声に合わせ、アリスも人目を気にせず大声で笑った。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫! 大丈夫!」
「ふふふ、サトシくんはおっちょこちょいさんだね」
頷くしかなかった。照れていた。でもそれより、全てを肯定されたような感覚が心地よかった。
そして僕のシャイとドジはアリスを笑わせ、その笑顔が僕の緊張をほぐしていった。まともにナイフとフォークを使えるくらいに。

✳︎   ✳︎   ✳︎

店を出た僕らは映画を観た。旧世代型の映画館で大勢でスクリーンを観るというのは新鮮だったが、僕は「いかた」がわからず、座ったままで良いその時間と空間だけでもいくつかのシャイとドジを見せつけることになった。
不思議なことに僕がやらかす度に、アリスから僕へのFコインアプリの♡数は上がっていった。
Fコインでは相手への好意が可視化される。♡を押しただけ点数が上がる仕組みだ。もちろん下げることもできる。さらに、稼いだ♡がトークンとなり、通貨として使える。
昔は「仮想通貨」なんて呼んでたらしいが、今じゃこれが当たり前。
モテるというだけで荒稼ぎして、280階建てのマンションの最上階から僕らを見下ろしている奴もいるわけだ。ずいぶん「イイ時代」に生まれたものだ。
とにかく、僕は今、そのモテを身を以て体験している。
アリスから僕への♡は今や90を越えていた。
そんな時、僕は今日最大の「ドジ」を踏んだ。
映画館を出た僕は「次の一手」を持ち合わせていなかったのだ。
悟られないように探りを入れることにする。
「えっと、お腹は……」
「まだ減ってないよ。2時間前に食べたもん」
「だよね!」
「夕食には早いし、どっか行こうよ。サトシくんのイキたいところがいいな」
「うん……じゃ……こっち!」
考えなく口走り、考えなく小走りで進む。
端から見たらオレオレ系の彼氏と付き従う彼女に見えているだろうか?
僕はスマートグラスのフォルダに保存した「デートマニュアル」を視線でめくるのに必死だった。この視線を悟られてはいけないのだ。
何分そうしてたか?5分?30分?
突然アリスが聞いてきた。
「ねぇ、どこに行くの?」
「え!? あの、面白いところ……かな」
「疲れちゃったよ〜ちょっと休憩しない?」
疲れと呼ぶにはいささかアンニュイな吐息で語りかけたアリスが、視線を移す。
その視線を辿ると、目に鮮やかなピンクが飛び込んできた。ラブホテルの看板だ。
僕はマニュアル検索に必死なあまり、ホテル街に迷い込んでいたらしい。
しかも、今立っている場所は人気もない裏路地だ。
しまった!がっついた奴と思われたか?
しかし、気になるのはアリスの様子だ。
嫌がってない?これがいわゆる「サイン」というやつなのか?
わからない!検索したい!マニュアルを読みたい!
パニックの僕を、男の声が正気に戻した。
「おいお〜い、ヤラねぇの?」
振り返ると二人組の男がこちらに歩いて来るのが見える。
一人はイカツイ表情の黒髪短髪で、格闘技でもやってるような厚い胸板。もう一人はチャラいとしか形容のしようがないニヤケ面の金髪ロン毛。
声をかけてきたのがこの金髪であることは次に声を発してすぐわかった。
「お前さっきからこの辺ぐるぐる歩き回ってよ、ホテル入る勇気もねぇのか?」
黒髪が続けざまに口を開く。
「女も焦れったそうにしてんだろ。かわいそうに。俺らが代わってヤろうか?」
こんなシーン漫画や映画で何度も見た。ヤバイヤツだ!
「アリス! 逃げ……」
次の瞬間、僕はコンクリートにキスをしていた。さらにとんでもない力で首根っこを押さえつけられる。
黒髪の方か?そうだ、金髪は今、目の前でアリスに飛びかかっている。
アリス?なぜ逃げようとしない?諦めたのか?動けないのか?僕を置いて一人逃げるなんてできないって?
この期に及んで僕はそんなクソ甘ったれたことを考えていた。そんな僕の甘さが招いたのがこの状況なのに。
また黒髪が僕の思考を遮る。
「あははは!やっぱ欲しいんだろ、その女!」
それを受け金髪が甲高い声でアリスに言う。
「でもさぁ、ちょっとくらい抵抗してくれないと燃えないんだけどぉぉぉ」
アリスはその言葉への最後の抵抗のように、金髪にされるがまま押し倒された。
ごめん、僕はまた君から視線を逸らしてしまった。見たくない。
世界でただ一人、君にしか似合わないそのウサギとタンポポがあしらわれたワンピースが無残に引きちぎられ、ショーツが剥ぎ取られる姿なんて。
しかし、嫌でも金髪の実況中継が耳に届く。
「それじゃ、お先にいただきま〜す」
終わりだ。そう思った刹那、
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁ!」
金髪のものと思しき断末魔の出どころを思わず見る。
股間を押さえた金髪がのたうちまわっていた。
何が起きたのかわからずアリスを見ると、彼女の足の付け根で「ナニカ」が蠢き、「ベッ」と言う音と共に何かを吐き出した。
吐き出されたソレは大きく弧を描き、僕の眼前に「ペチョン」と情けない音を立てて転がった。
僕はその見覚えのあるモノを見て、あまりの見覚えに、言葉より先に胃の内容物をぶちまけた。これが漫画なら笑ってしまっていただろう。僕が2時間前に咀嚼して吐き出したソーセージの中に、「たった今咀嚼されたソーセージ」が転がってるのだから。
僕を押さえつけていた黒い獣も、真の状況は理解できていなくてもこのヤバさを本能で察したらしく、手負いのもう一匹を連れて逃げ出した。
獣が僕らを襲撃した事実などなかったかのように、アリスは静かに立ち上がり、汚れたワンピースを軽やかにはたいた。ちょうどおとぎの国のおてんば少女のように。
ただ一つ違うのは、僕の知ってるおとぎの国の少女は、太ももを伝う血をワンピースと同じ軽やかさではたいたりしないことだ。
それ以外は完璧だった。髪を耳にかける仕草も、僕を見てニッコリ微笑む顔も。

✳︎   ✳︎   ✳︎

どうしてこんなことになった?
仰向けの僕の上にアリスが覆いかぶさり潤んだ瞳で見下ろしている。
アリスの背後、つまり天井ではまがい物のシャンデリアが八方美人に七色を振りまいている。
そうだ。あの後、アリスは僕をこの城に引きずりこみ、話す間も与えず押し倒した。ピンクの看板の趣味の悪い城だが、ベッドの寝心地、いや、突き飛ばされ心地だけは良いのがわかった。
こんな状況じゃなきゃ、この部屋を訪れた男女のように甘い時間に没頭できたのだろう。
そうなれない理由は簡単だ。
「さ、さっきの……何?」
自分の声が上ずっているのがわかる。
「見えちゃった?」
アリスの問いに素直に頷くと、間髪入れず次の問いが来た。
「サトシくん、童貞?」
“普通に”この状況を迎えていたら見栄を張ったかもしれないが、嘘を吐くのが得策とは思えず、ただ頷いた。
「じゃぁわからないじゃない? 女の子ってみんな“ああなってる”のよ」
「そんなはずない!」
「どうしてわかるの? あ、エッチな動画とかで観たことあるんだ?」
思わず顔を背けてしまった。
好都合とばかりにアリスは僕の耳元に吐息を混ぜて語りかけてくる。
「別にいいと思うよ。男の子なんだから。ただね……」
黙って続きを待った。
「ただ、あんな作り物の行為が本物だと思わないでほしいの。嫌がってても最後には悦ぶだろ、とか。君は、そんな男じゃないよね?」
そう言って僕の唇に近づくアリスの唇の誘惑に流されそうになった僕の脳裏に、金髪の断末魔がよぎり、僕は彼女を突き放した。
「ちょ、ちょっと待ってよ! だから、アレは何だって!」
僕の語気にアリスは観念したように小さくため息をついて話し出す。
「私の体にも、あなたの体にも、生まれた時からナノ粒子レベルに細分化されたマイナンバーが埋め込まれてる。おかげであらゆる個人認証が体一つでできるようになった。Fコインに登録するときも、そのナンバーで個人認証したよね?」
「……うん」
「そこまでは一緒」
そう言うと、アリスは自分の下腹部に手を当てた。
「でも私のココにはもう一つ、別のアプリが埋め込まれてる」
「別の……アプリ?」
「人体連動型貞操管理生体アプリ『Eggpon』」
「貞操……生体アプリ?」
「簡単に言うと、私の肉体に連動した生き物が棲んでる、みたいなこと。私ね、望まれない子だったの。どこの誰がパパだかわからないんだって。ママは私に同じ思いをさせないようにって、私が生まれたとき、これを埋め込んだの」
アリスの説明自体はなんとなく理解できた。
要するに貞操の番犬ってことだろう。
でも、その事実を受け入れられない僕にさらにアリスが言う。
「だからね、Fコインアプリの♡の数値はマイナンバーで私の肉体に紐づけられてて、私の♡が80に達してない個体が私に“侵入”を試みると、このコが発動する」
言うやアリスが「そのコ」を僕の腰に押し付けた。
「ヒィッ!」
「大丈夫よ。あなたに“牙は剥かない”。言ったでしょ?」
僕は焦りスマートグラスの表示を確認した。
アリスの僕への♡は92だ。
「ね、大丈夫。でも……これじゃ、ね」
いつの間にかアリスの手が僕のズボンの中に滑り込んでいた。
その感触にも気付かないくらいに僕は、“縮み上がっていた”。
「アリス、やめてくれ」
「なんで?」
「なんでって、無理だよ」
「無理じゃないよ。私、頑張るよ!」
「できないって!」
「私のこと好きじゃないの? だって、ほら! ♡98もくれてるじゃん!」
「だけど、こんな……」
「好きなら、奮い勃ってよ!」
「こんなの、普通じゃないよ!」
「……え?」
「僕はもっと、普通な……普通がいいんだよ」
「普通……だよ?」
「普通じゃないよ! そんな大事なこと隠してたなんて」
「知らなければ、普通にデキてたはずだよ」
「でも知ってる! 初めてで、そんなの、重いし、怖いよ」
「私だって、初めてだし、怖いんだよ?」
アリスの言う怖いは僕のそれとは違う。
もう何も言えなかった。
とにかく、この場を離れたかった。
「ごめん、他の人を探して」
僕自身、想いを断ち切ろうと強めに言い放ち体を起こした。が、それ以上に強い想いでアリスが僕を押さえつけて呟く。
「ひどいよ……サトシくん、そんなこと言う人だなんて……」
アリスの声が、身体が、震えているのがわかる。その目は涙を溜め、あらぬ方向をジッと見つめている。
僕はハッとして、俯き、スマートグラスを覗き込んだ。
アリスの僕への♡が、90…85…とグングン下がっていく。
スマートグラスは視線を一点に止めることで押下を認識する。
アリスが見つめているのは僕への♡を下げるボタンだ!
83…82…81…80…そこで止まった。
「アリス、落ち着いて。ねぇ、こっちを見て……見てくれよ!」
僕の言葉に、ゆっくりアリスが視線を合わせてくれた。
信じられないほど美しく、悲しく、冷たい目。その目からついに大粒の涙がこぼれ、彼女のスマートグラスのレンズ内側にポトリと落ちた。
あぁ、スマートグラスってよくできてるんだな。水滴にも反応するんだ。
♡が「79」に表示を変える。
自分のレンズの表示越しに、アリスがありったけの力で僕の腰に「そのコ」を押し当てるのが見えた……。

【あとがき】

仮想通貨ネタでふと思いついたので書きました。
「貞操をブロックチェーンで管理する」という視点がやりたかったのと、界隈の

・えぐぽん(@eggpon)さん
・トンパ(@tonpa)さん
・えーす(@ace69)さん

のビジュアルやDatecoinネタにインスピレーションをもらいました。
御三方には深く感謝申し上げます。
またふと思いついたら書くかもしれませんが、書くために思案することはありませんので、二度と書かないかも。
本当は映像でやりたいんだけど。難しいかな…笑

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○仮想通貨の⇨@komicrypto
○普通の⇨@KoichiMiwa
○ALISもやっとる⇨ここだよ

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